第12話 田中角栄の落とし子ベンチャー、国交省に泣かされる? 全国無水掘工法協会(現・NPO法人 NETIS新技術活用協働機構)電子版
永見博希代表
電子版内容改編中~
増え続ける災害... ----------------------------------------------------------------------------------------2
従来工法との違い----------------------------------------------------------------------------------------3
国の推奨技術... -------------------------------------------------------------------------------------------4
談合の厚い壁... -------------------------------------------------------------------------------------------5
必要は発明の母... ----------------------------------------------------------------------------------------6
飛び込みセールスの世界... ----------------------------------------------------------------------------7
オーナーシステムという社名... ---------------------------------------------------------------------8
無水掘工法の将来... ------------------------------------------------------------------------------------9
障害者の経済的自立支援のためのNPO... -----------------------------------------------------10
・★素人だからできた水を使わない画期的な「無水掘工法」(4)(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)
・★国交省の新技術情報提供システム「NETIS」(100)の推奨技術(81)(81ノ2)(81ノ3) となる
・★障害者団体とのコラボによるNPO(73)での新展開が始まる
災害大国日本 (4)竹下創政キャンペーン(4ノ2) 土砂災害大国日本防災二ユースで、危険な急斜面や崩れ落ちた崖などを補強・修復する技術は、いろいろあるが、大半の技術は大がかりで土壌を掘削するために水を使用する (5ノ4)。「無水掘工法」(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)はその名の通り、水を使わずに削抗できる。そのため機械も小型(5ノ3)で、足場も小さくてすむ。
その結果、コスト縮減並びに工期の短縮が可能になるという、実に画期的なものである。
島根の中学を卒業後、金の卵として大阪の一部上場企業に就職した永見博希代表だが、
自力で高校に進学・卒業後、建設業の世界に転身する。新たな工法を発明した後に、独立
して無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)を開発。その普及に人生を賭けることになる。
国交省の新技術情報提供システム「NETIS」の推奨技術 (81)(81ノ2)(81ノ3)となり、従来工法ではできない斜面防御工事など、今でも語り継がれるほどの難工事をクリアーしてきた技術だが、
NETISに登録されたばかりに、やがて既得権益の厚い壁と“談合”に翻弄される。
国交省(29)および行政(31)(31ノ2)(31ノ3)(31ノ4)(31ノ5)(51)の対応に翻弄されながら、倒産の危機(103ノ2)をバネに、現在のNPO法人「NETIS新技術活用協働機構」(73)を設立、新たな展開が始まっている。
増え続ける災害
狭い国土に1億2000万人の人口がひしめく我が国は、世界有数の災害列島(4ノ2)でもある。
地理的に、地震や津波、台風、火山の噴火などの自然災害が発生しやすいことから、毎年多くの犠牲者を生んでいる。特に、東海地震、東南海地震など、迫りくる巨大地震(106)を想定して、政府の防災中央会議でも行政サイドの取り組みはもちろん、個人や企業、地域コミュニティなど、民間の力を活かした防災対策を積極的に推進する方向にある。
事実、国の施策も次々と打ち出されているわけだが、その反面、近年目立つのは異常気象の影響もあってか、集中豪雨 (48ノ4Ⅼ)(1ノ4) (3)(3ノ2)(4ノ2) による土砂崩れや大洪水などの多発である。そのため、防災や減災が盛んに謳われるのだが、例えば全国の急傾斜地崩壊危険箇所に六〇〇万人が暮らしているといわれる中で、整備が進む一方で全国の危険箇所(4ノ2) は年々増え続けている。
そんな日本で注目されている「無水掘工法」(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)は、一般的な知名度こそないが、土砂災害の多い日本に必要なものとして「全国無水掘工法協会(7ノ3L)(41ノ3) 」永見博希代表(Wikipedia)(現・NPO法人「NETIS新技術活用協働機構」(73)永見博希理事長)が全国に普及しようとしてきた新技術(9)(9ノ2)(9ノ3)(12)である。
無水掘工法は同協会の永見代表が社長を務めるオーナーシステム(株)(2) が1993年1月に開発した技術で、従来の方式とは異なり、水を使わないことから「無水掘工法」(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)と命名。2003年1月に特許(73ノ21) を取得した。コンパクトな機械(5ノ3) により、無注水で地山肌を傷めないという、削孔の常識を破る画期的な工法(5)(9)(31)(63)(81)(95) (95ノ2B)として、急斜面の地滑り対策や斜面防護工事などのロックアンカーやロックボルト施工に欠かせない。ちなみに、ロックアンカー、ロックボルトなど聞き慣れない言葉だが、要は斜面をセメントの枠(法枠)で格子状に覆って、崩れないようにアンカー(錨)やボルトで岩盤につなぎ止める技術である。
無水掘工法の評価については、一九九八年度に国土交通省がNETIS(新技術情報提供システム)(9ノ2) に掲載。「本技術は削抗水を使わず、圧密削孔 (41ノ2L)により抗壁保持 (41ノ2L) を行い、永久アンカーの命である設置地盤の確認が一本一本可能であり、超軽量電動削孔機 (5ノ3) 使用によりコスト縮減、工期短縮、安全施工が可能となった工法」と紹介していることでもわかるはずだ。
主な実績の中で、画期的なものとして、今も語り継がれているのが、1993年当時の建設省福知山工事事務所(5)が行った京都府夜久野町の法面防災工事現場である。
京都から丹後・但馬、山陰方面への大動脈である国道九号線に面した現場は、法面が極めて急傾斜で後背には山地が広がり、国道に落ち込んでいくような地形である。92年に防災工事が行われたが、厳しい地形のため、一部に崩壊が発生し、ロックアンカー工事の再施工が必要になった。しかし、従来の工法 (5ノ4)(69ノ3) では二次災害の懸念があり、結局、無水掘工法(5)による施工が行われた (81)(69)(105) 。工事は安全かつ迅速に行われ、無事完了したのだが、さらに予定工期を大幅に短縮し、結果的に工事予算の下方修正を実現することになった。
従来工法との違い
全国の約九割の市町村の住民が土砂災害の危険と背中合わせという災害大国ニッポンで、無水掘工法は画期的な(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)技術として、国土交通省からの評価は高い。二〇〇一年度に国交省の「公共事業等における新技術情報提供システム」(9ノ2) がスタートして、無水掘工法はいわばお役所のお墨付きの技術として「技術活用パイロット事業」 (69)(2ノ12) に、工法指定という形で認定されている。
実際に採用されたのが、2001年に中国地方整備局山口工事事務所(22)が行った国道二号線勝谷防災工事であり (21) 、同整備局の中国技術事務所がパイロット事業の「成果概要」の中で紹介している (22ノ2)(22ノ3) 。それによると、同国道は交通量が非常に多く、しかも片側一車線のため、交通規制が難しいことから、仮設足場の規模を小さく施工できる無水掘工法を採用し、コスト縮減、工期短縮を図った。2002年には本省発表(23)となった現場でもある。
さらに、従来のロータリーパーカッションによる泥水掘二重管工法(69ノ3)と比較。実施結果について (69) 、次のようにまとめている。
一、経済性は約25%の縮減、工期は従来と同程度であった。
二、ドライ削抗のため(岩盤の)定着層の確認ができ、泥水処理が不要である。
三、削孔機械の軽量化により、仮設足場の規模が縮小されている。
四、リモコン遠隔操作により落下・合図ミスを防止できる。
五、削孔スライム(残土)および自動搬送システムにより現場内がクリーンである。
2003年には国道四二号線・河瀬(鹿ケ瀬)地区擁護補強工事を行った近畿地方整備局和歌山河川国道事務所が「建設技術展2004近畿」(21) の「活用技術討論会」(33)で活用者として発表(33ノ2L)。
2004年には、中部地方整備局紀勢国道事務所が42号線・海山鷲毛地区法面防災工事(32)での「無水掘工法の採用によるコスト縮減(33ノ2L)」の成果を発表している。
無水掘工法と従来の有水削孔との違いについて、改めて比較すると、水を使わないことによる利点の一つは、岩盤までの距離が現場で確かめられることだ(5ノ3) 。
「従来は設計書があるといっても、推定岩盤線といって、何メートル掘ると岩盤に届くはずだという工事のやり方だったんです。しかし、土の中のことですから、やってみなければわからない。それが無水掘工法では1メートルずつ土質の調査をしながら工事を進めることができるので、間違いがない」と、永見代表は強調する。
和歌山県河川国道事務所は超高圧で噴き出される掘削パウダーを容易に確認でき、アンカーの命ともいえる「定着地盤の確認」が確実に行える点を「画期的だ」と評価して、発表したといういきさつもある(33)。
もう一つは無水掘工法だと、地下水の動向がわかること。山の斜面を掘るため、現場に地下水脈があると、水が噴き出してくる。ところが、従来の方式(69ノ3)では削孔に水を使っているため、地下水の確認ができない。そのためアンカーやボルトをセメントで固定したつもりが、地下水で希釈されて抜けるなどの品質低下につながる。無水掘工法だと、それが事前にわかるため、排水の処置をした上で工事を進めることができる。
この二つが技術的に非常に高い評価を得ている点だという。もちろん、従来の工法との違いは「工事コスト34%低減」といった点にもある。削孔の機械は(5ノ3) 、従来のものは重さが1・5トンあった。従って、足場も4・5メートルの作業幅になる。それが無水掘の機械はわずか250キロ。足場も1・6メートルと非常にコンパクト(5ノ3) 。つまり、コスト三四%低減という意味は、従来は1000万円かかった仮設足場が、無水掘工法では200万円ですむからでもある。その機械のコンパクトさが、さらに無水掘工法の安全性を高め、
工期の短縮化にもつながっている。その結果の累計7億1300万円の公共事業費削減実績 (105) というわけだ。
国の推奨技術
構造改革を掲げて(16)(19)(20)、コスト縮減(9)(31)(50)(81)(105)を図った小泉政権下(24) (20)(21) 、2002年に制定された知的財産基本法(19)(20)(24) もまた、無水掘工法を結果的に保護してくれることになる。同法の制定は大学や中小企業、ベンチャー企業が生み出した知的財産を活用し、地方自治体による知的財産に関する取り組みを通じて産業の創出を行うことで、日本経済の活性化を目指している。
同協会の無水掘工法も、そうしたものの一つとの位置づけで、いわば国の推奨技術(81)(81ノ2)(81ノ3)として「工法指定」の工事が発注される仕組みが法律的にも整備されていったというのが、近年の動きでもある。公共事業などにおける品質確保 (39)(39ノ2) 、コスト縮減(9)(31)(50)(81)(105) という時代の流れの中で「工事コスト34%低減」をキャッチフレーズにする無水掘工法は(5)(5ノ2)(5ノ3)(81) 、まさに時代の要請にかなった技術としてその前途はバラ色のはずであった。
だが、現実には国の認定を受けて、無水掘工法は逆に売上が激減する事態(29)(29ノ2)となったのである。
それまでの民間べーすの仕事では、例えば元請けが受注した工事が、従来工法では1億円かかるのが、無水掘工法では7000万円ですむとなれば、無水掘工法を使うところも多い。それが、今日まで650を超える現場で17万平方メートル以上の工事を手がけてきた実績(9)(31)(50)(81)(105) につながっている。
その無水掘工法が国の推奨技術(81)(81ノ2)(81ノ3)になったのはいいのだが、元請けが一億円と見積もった工事が無水掘工法を使う場合は、3000万円減らすということになった。従来工法より三割安上がりな無水掘工法を使えば、それだけ予算が削減できて税金の負担も減るわけだから、まさにコスト構造改革(9)(31)(50)(81)(105) の成果というわけだが、そうは問屋が卸さないということだろう。
元請けとしては、1億円で受けた工事が7000万ですめば、それだけ利益が大きいから無水掘工法を使うわけである。それが、コストがかからない工法だからといって、7000万円にされては、元請けとしてのうま味がなくなる。だったら、従来通りのほうが売上を確保できるだけいいというわけで、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B) を使わない現場が多かったのである(78) 。
談合の厚い壁
工事実績についても、2001年に国交省の「技術活用パイロット事業」 (69)として、山口県の国道二号線の防災工事(22)が工法指定によって無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)で行われた。2003年には和歌山県の国道四二号線擁壁補強工事(33)が無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B) で行われたが、問題は品質確保(39)(39ノ2)・コスト縮減(9)(31)(50)(105)のため国が使うように指定した技術 (31)(31ノ2)(31ノ3)(31ノ4)(31ノ5)(50)(51)にもかかわらず、二つの工事の間に、2年間のブランクがあることだろう。
理由は、国と国交省の担当局では、法律をつくって新技術を使うような仕組みになっているのだが(9)(50) 、地方の事務所の段階では無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)が外されているからだ。法律および国の施策は国交省が決めても、地方の現場では相変わらず法の不備をついて国の意向が無視される(111ノ2B) 。その背景となっていたのは、公共事業、建設業界に根強く残る談合の厚い壁だったのである (111ノ3B) 。
結局、無水掘工法は国の推奨技術(81)(81ノ2)(81ノ3)になったばかりに、大変な苦労を味わうことになったというわけである。
倒産の危機(29)に見舞われる一方、経営革新支援法(25) という法律に基づいて、2003年に無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)は大阪府から3500万円の特別融資を受けたほか、中小企業経営革新支援事業補助金として700万円の補助金を受けている(25)。だが、捨てる神あれば拾う神があると喜んでばかりもいられないだろう。
世の中に貢献したいと思ってきた永見代表にとしては「片一方で新技術を育てましょうといって税金を使い、もう片一方の国交省には結果的に足を引っ張られている(29)(65)(68)(97) 。行政がしていることは、大変な税金の無駄遣いではないですか (51)(51ノ2)(51ノ3)。上と下でどっちを向いているんですかと、国交省に乗り込んでいったという。本省では「よかれ」と思って法整備を行ってきたことも確かであろう。談合が問題になっている今だから、明らかにできることでもあろうが、悪いのは古い営業スタイルが残る地方の事務所である(111ノ2B) 。
だが、2006年の7月、国交省は「公共事業における新技術活用の促進について」という新たな通達を出して(45)(45ノ2)、8月からの本格運用を義務づけた(46)。地盤などを検討して、使える現場であれば、優先的に無水掘工法が使われるようになる(31)(31ノ2)(31ノ3)(31ノ4)(31ノ5)(51)。
さらに、官製談合防止法が改正になって(OS)、3月から施行される。談合幇助も罪に問われることから(OS)、談合システムにも歯止めがかかっている。無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)を現場の顔役や建設OBの一言で外すことが難しくなって、2007年度(2006年9月~2007年8月)は、すでに13件以上の受注があり、以前の売上水準に戻るメドが立ったという。
本来、災害大国ニッポンにおける防災のためのアンカー市場は、年間800億円と言われてきた。談合に歯止めがかかりつつある今、全国無水掘工法協会(7ノ3L)(41ノ3)も再スタートの時期を迎えている。
必要は発明の母
地震が起きるたびに問題となる津波(TUNAMI)は、災害列島日本を象徴する言葉であり(1) (4ノ2) 、実は世界共通語である。地震大国(67)(67ノ2)(67ノ3w) といわれる日本はもとより、世界は地球規模で発生するさまざまな災害に苦しんでいる 。
国土交通省の活用促進技術 (81) として、国のお墨付きを得ており、地震や災害(67)が起これば、それだけ無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の出番が増えても不思議ではない。事実、2004年の中越地震の関係では現地に呼ばれて四工区で無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)が採用されている(37)(37ノ2)(37ノ3)(37ノ4) 。
従来工法では常識とされてきた水だ (5ノ4) )、なぜ永見代表は水を使わない無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)を開発することができたのだろうか。その答えは、永見代表に言わせれば「素人だからできた」ということである。
「昔からやっている人は常に従来工法ありきなんです。その殻を打ち破れない。私は途中から基礎工事の世界に入ったから、彼らの常識がおかしいと思う。なぜ水を使わずにできないのかという素朴な疑問があって、最終的に圧密削孔(41ノ2L) という特許技術 (73ノ21) に行き着くことができたんです。コロンブスの卵で、できてしまえば何ということはない。でも、それをやるには何らかの閃きがいる」
これまで崖崩れの現場や切り立った壁面で、大手企業が巨大な足場を組み大きな建設機械を使って、災害復旧や補修工事を行ってきた。そうした従来工法 (5ノ4) のやり方を知れば、確かに水を使わずにできないものかと考えたくもなろう。
だが、そこに関わっているのは日本を代表する企業であり、大がかりな装置をつくっている一流メーカーだ。その装置が仮に1000万円しても2000万円しても、現にそれしかないのだから、それを使うしかない。黙っても売れている間は、基本的に研究開発する必要はない。研究所を持つ建設会社は少なくないが、彼らが研究開発するのは、もっと別の新技術・新事業であって、そこから画期的な技術が出てこないのはそうした背景もあると、業界事情通は暴露する。「必要は発明の母」といわれるが、それは建設会社ではなく、その下の「きつい、汚い、危険」と呼ば れる3K職場 (1ノ8) で働く者の視点からしか生まれてこないということだろう。
飛び込みセールスの世界
永見博希(Wikipedia)は1944年4月10日島根県那賀郡弥栄村に生まれた (2ノ5W) 。地元の中学を卒業後の1960年、集
団就職列車に乗って、大阪の一部上場企業(73ノ4) に就職した。中卒が「金の卵」(73ノ3W) といわれていた
時代に、地元ではじめての上場企業(73ノ4) への就職は大いに話題になったという。
検査課に配属された彼は、自分の父親のような年輩の人たちに混じって働くうち「自分もこのまま、彼らの年齢になるまでこの仕事を続けるのか」と不安を覚えて、16歳から大阪府立和泉高等学校 (73ノ5) の夜学部に通い始めた。会社はそんな彼を「向学心があってエライ」といってはくれない。
会社側は未成年のうちから安い賃金で使って、18歳になった後も、さらに安い賃金、残業代で深夜労働をさせる。それが金の卵(73ノ3W) と呼ばれるゆえんであった。
学校を続けるか、残業代を拒否(辞表を提出)するか、二者択一を迫られ、彼は学校を選んだ。洋服店に勤めながら高校を卒業して、21歳でセールスの世界に入った。
営業の世界を転々とする、そんな彼の人生を変えることになったのが、エンサイクロペディア・ブリタニカ(1ノ6) 商法であった。当時、一生懸命働いて月2万円程度の時代に、新聞広告に「週給10万円」(1ノ7)と出ていたのだ。大阪での説明会に行って、15分で英語の百科事典を売るためのプレゼンテーションを体験。
講師役のマネージャーから「今のセールストークを、同じようにできると思った人は手を上げてください」といわれて、手を上げた。
だが、実際にやってみると、はじめのフレーズぐらいはできたものの、後が続かない。「失敗した」と思ったというが「いま手を上げた人は、必ず成功します」といわれて採用になった。
「成功する」と言われた彼は、2カ月でキャプテンになり、部下を抱えるまでになった。22、3歳の若さで、月10万円の生活が続いたが(1ノ7)、やがてキャンセルが多いことから、週刊誌で「洗脳商法」としてたたかれ始めた。彼自身はほとんどキャンセルはなかったというが、それでも「自分のやってきたことは間違いだったのか」と考えてしまった。
スランプに陥った彼は、高校で一緒だった同級生に「叔父さんがやっている基礎工事の仕事をやらないか」と誘われて、現在の建設の世界に入った(OS)。
オーナーシステムという社名
田中角栄首相の列島改造論(1ノ2W)の時代、永見氏は建設の基礎工事を行うT社に就職した。下請けの仕事は、親方が仮に10日間の仕事を請け負ってきて、それを半分の5日で仕上げれば、それだけ儲かる。そのための生産性を上げる工夫が、彼には興味深かったという。
もちろん、いつも儲かるわけではない。基礎工事は地盤に左右されるため、逆に10日間の予定で受けた仕事が10日で終わらないケースもある。それでももともと島根県の農家(2ノ5W)の出ということもあ って、土に関わる仕事は彼の性に合っていた。
やがて、震動騒音規制法ができて、各社が震動や騒音のない新工法の開発に取り組む中で、彼は基礎工事に欠かせない矢板の打ち込み作業を無震動・無騒音で行うTOP工法を考案、大ヒットさせて、T社の発展に大きく貢献した。彼のいた10年の間に、当初は7000万円の年商しかなかったT社は、7億円を売り上げるまでになったという。
売上が上がる一方、T社だけでは施行体制がつくれないという事態に直面。そこで、TOP工法を扱う会員を募り、TOP会と称する全国組織をつくって全国展開を図っていった。常務取締役になり「二代目社長をやってくれ」といわれていた永見氏だが、やがて身内で社内を固めるといった社内事情から退社。82年8月、基礎工事の会社「オーナーシステム」(2)を立ち上げた。
当時は東洋工業がマツダに社名変更するなど、カタカナ社名が流行っていた。社名は田中派七奉行(2ノ6W) といわれた同郷の竹下登元首相秘書の青木伊平氏(2ノ7W) が、いくつかの社名候補の中から選んでくれたものだ。
基礎工事にオーナーシステムの社名はそぐわないようだが、永見氏には彼なりの思いがあった。基礎工事という下請けの世界は、日給月給制で、元請けや親方にとっては仕事のときだけ、お金を払えばいい。実に都合のいいシステムだが、使われる側には何の補償もない、まさにその日暮らしである。
独立して会社を始めるに当たって、彼には不安定な下請け業界を変えたいという漠然とした思いがあった。つまり、元請けも下請けも、親方も子方(職人)も一匹狼の請負業と考えれば、それぞれがオーナーというわけである。使う使われるという関係ではなく、お互いを活かすようなオーナーシステムができないかと考えていたからだ。
独立後の数年、現在の仕事であるアンカー工事を商社的な立場で受注。中国自動車道から島根県浜田に抜ける横断道 (2ノ8) 10工区のうち島根県側5区をオーナーシステムが手がけるなど、立ち上がりは順調だった。だが、そのうちの1工事を960万円で契約したところ(2ノ12) 、いわゆる土質の問題で、結果的に4500万円かかってしまった(2ノ12)。それぐらい土の中というのはわからない。
そのとき、永見社長は土質について「これだけ確立されていない仕事があるんだ」と思い、逆に「面白い」と感じた。そして「アンカー工事とは何ぞや」ということを否応なしに勉強することになる。面白いと思い、アンカーについて深く勉強したからこそ、今日の無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)という特許工法に至るわけである。
「素人だからできた」という無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)だが、それはT社時代に考え方TOP工法(OS)も同様。「そんなことできるわけがない」と、先輩たちからバカにされながら開発した経緯があった。
無水掘工法の将来
基礎工事の世界で「最終的に生き残るには技術しかない」と考えた永見社長は、人脈を活かし商社的な仕事をする一方、アンカーの施行を行う中で、彼なりに無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)を試みてきた。その実績をもとに技術的に確立できた1993年に「無水掘工法」(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)と命名。同工法の普及のため、永見社長はかってのTOP会を参考に「JOSシステム研究会」(2ノ12) を設立した。
JOSはジョイント・オーナーシップ=共有という意味で (2ノ11) 、技術とノウハウを元請け・専門業者と共有し、効率的に推進する業界初の施行システムである (2ノ11) 。
会員には入会金(預かり金)400万円で掘削機一台と特許工法の使用権が貸与される(27L) (27ノ2) 。その特徴は、元請け会社と下請け会社の両方にメリットがある。通常は下請け業者が数人のスタッフを派遣し、元請け会社の社員が一人で現場の管理を行う。
JOSシステムでは元請け会社から数人のスタッフを出してもらい、オーナーシステムはマイスター(2ノ10) と称する施行技師一人を現場に派遣する。このとき、元請けからスタッフを出してもらうことに対して、その人件費を肩代わりする形で請け負い価格を割り引いていく(27L) 。
オーナーシステムは売上が減る半面、余ったスタッフを他の工事現場に回せるため、結果的に多くの現場を手がけることができ、一人当たりの生産性は上がる(27L)。つまり、施行会員を募り、全国的な施行体制をつくりながら(7ノ3L)(41ノ3)、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の普及に努めていく。その活動が具体的に結実したのが、今日の全国無水掘工法協会(7ノ3L)(41ノ3)である。
だが、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)が脚光を浴びて、まさに「これから」というとき、国が推奨する技術になったばかりに (81)(81ノ2)(81ノ3)、談合や天下りの厚い壁に阻まれ、苦難の時代を経験するわけである。
その一つの打開策として、2006年7月、国交省は新たに「公共事業における新技術活用の促進について」 (45ノ2) という通達を出して、発注者指定型(48)(64)(69ノ4) のほかに施行者希望型(OS)の工事を追加した。
全国無水掘工法協会(7ノ3L) (41ノ3)が公共工事などの情報を得て、発注者に提案したら、検討して採用してくれるとの施策になったという。「これで救われるようになった」と永見代表は語るが、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の将来は、この通達を徹底できるかどうかにかかっている。
あるいは、2007年度から地震急傾斜地崩壊対策緊急事業(OS)として、崩壊対策のための予算がついて、都道府県と国土交通省が具体的な補強計画を作成することになった。法枠、アンカーなどによる対策を進めるということは、必然的に無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)でということを意味する。
だが、今はこれら事業が1億円で発注され、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)で三割縮減できるからといって、予算が7000万円になるわけではない。従って、元請けは単純に3000万円儲けて、とりあえずは新技術が活用されるにとどまる。
それでも、国が推奨されてきた技術が外されてきたことを思えば、一歩前進ではある。そして肝心なコスト削減は、次なる課題ということのようだが、国交省はその事実を知っているのだから、結果的に地方の談合を見逃すという形で支えていることにもなる。それは当たり前に考えれば、納税者への裏切りである(78)(104) 。
水を使う従来工法はデメリットが多いとはいえ(5ノ4) 、それしか方法がなければ仕方がない。医者の薬と同じで、副作用があっても使わざるを得ない場合もある。
だが、時代は変わった。実際に、従来工法でやった現場が地盤沈下や崖崩れなどで補修工事が必要となり、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)で再対策工事をした例もある(51ノ3)(69ノ2)(69ノ3) 。その意味では危険箇所を修復し、地域住民の安全を確保すると同時に、工事コスト34%低減(9)(31)(50)(81)(105)をうたい文句に、税金の節約を図ることを通して、国家に貢献しようという永見代表の戦いは、まだまだ続く。
障害者の経済的自立支援のためのNPO
「全国無水掘工法協会」(7ノ3L)(41ノ3)の永見博希代表(Wikipedia)を、はじめて大阪に訪ねたのは、3・11東日本大震災(67W)が起きる四年ほど前のことだ。
長年、ベンチャーの取材をしていると、一回の取材で記事にする場合もあるが、記事の内容とタイミングもあって、二回三回と話を聞いてから記事にする場合などいろいろである。だが、雑誌掲載後に、その後の展開をフォローするケースとなると、それほど多くはない。
そんな中で永見代表が普及に努めてきた「無水掘工法」(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の場合は、『エルネオス』誌上で、その後の経緯を三回ほど記事にしている(73ノ19B) 。
その一つが、2010年2月号に掲載した意外な経過報告と永見代表からの「告発文」であり(55ノ2B)、その記事が後に「LLP(有限責任事業組合)無水掘工法設計比較・検討支援事務所」(48)(64)による大阪府相手の提訴(55L)(68)、そして裁判の途中経過レポートへとつながる(73ノ19B)。
なお「LLP無水掘工法設計比較・検討支援事務所」(48)(64)は、NETISに登録された新技術が発注に当たって積極的に活用されていないことから、国交省が新技術の活用を推進するため、2004年に「設計義務共通仕様書」(31) の規定を改正し、比較情報について「必ず比較・検討する」ことを通達したことから「全国無水掘工法協会」(2ノ13)に代わって、新技術活用のための適応・検討を支援していくことを目的に、新たに設立されたものである。
私としては、最初に「無水掘工法」(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の問題を記事にした経緯もあり、私なりに経過報告を兼ねて問題提起を行ってきたわけだが、本来は会計検査院(51)(51ノ2)(51ノ3) が取り上げてしかるべき問題だろうというのが、率直な印象である。
地味でわかりにくいため、マスコミは扱わないままだが、問題の根は深い。本文でも記しているように、時代も大きく変わり、掲載の年は官製談合防止法が改正になり、三月から施行されて、談合幇助も罪に問われることから、日本の談合システムにも歯止めがかかったようで、受注状況も順調ということで、記事にしたものである。
それがわずか三年後の「告発文」(55ノ2B) である。一体、何があったのか?いわゆるベンチャーの失墜は、珍しいことではない。だが「無水掘工法」(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の場合は国交省のNETISに登録された、いわば国の推奨技術である(81)(105)。「告発文」は「国交省推奨の無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)は業界の談合・既得権益体質の縮図である」とのタイトルで掲載され、同工法が国交省の指導の下、積算に使われるようになっても、実際の工事では排除されて、結果的に倒産の危機にあるとの切実な内容である (103ノ2)。同工法が公共事業の積算に使われると、工事予算額は三割縮減となることから、国の予算が削られ、税金の負担も減る(9)(31)(50)(81)(105)。何の問題もないはずだが、現実には公共事業の積算に使われるだけであって、実際の工事は無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)では行われない。いわゆる公共事業の、積算→発注→受注→施行というプロセスの入口である積算に無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)を用いて(48)(64)、出口である施行は無水掘工法を使わない(39ノ2)。そんなことができるのかというのが、素人の素朴な印象だが、現実に起きているのが無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の排除なのである(65)(65ノ2L)。
永見代表が告発した問題の一つは、国交省が通達を出し、会計検査院が是正勧告(51)を出しているにもかかわらず、いわば国の意向を末端の現場が無視していることだ(78)。
もう一つは、国交省が通達の徹底が図れるように、出口で「無水掘工法」(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)と特定しないことである (69)。つまり、実際の施行技術については「任意」あるいは「同等以上の技術」という曖昧な表現のため、肝心の施行の段階で、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)が外されることになる。
その結果、現場で起きているのが、大阪府のケースでは公共事業の積算には無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95) (95ノ2B)を使って(48)(64)、予算の三割縮減を達成する一方、実際の工事は従来工法で行われる(5ノ4) (5ノ3)。単なるコストダウンを強いられる形となり、工事を請け負う下請け業者にしわ寄せが行く(39)(39ノ2)(39ノ3) 。そのため、オーナーシステムの元従業員が無水掘工法の機械を不正に使用するなど、大阪府が背景を調査する事態まで生じている(54)(54ノ2B)(55)(55ノ2B)(56)(57)。(00)(00)(00)(00)(00)(00)
2003年8月8日号の「日経コンストラクション」での「下請けたたきとの決別」(27L) という特集記事の中で「特殊な技術を持つ下請け会社の側から、元請け会社との新たな関係を築こうとするケースも出てきた」として、オーナーシステムの「無水掘工法(5)(9)(31)(63(81)(95)(95ノ2B)」がクローズアップされている(27L)(27ノ2) (39)(39ノ2)(39ノ3)。大阪府の事例は、長引くゼネコン不況下、下請けたたきの実態は相変わらずというより「日経コンストラクション」が10年前に「下請けたたきとの決別」(27L) のための理想的事例の一つとして紹介した無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)が下請けたたきをむしろ助長するために使われるという皮肉なケースである(9)(31)(50)(81)(105)。
国の施策、業界の厚い壁に翻弄されてきた永見代表は、告発文で(55ノ2B)「大阪府のケースに見るように、実際に積算され(48)(64)、すでに支払われた開発費が開発者のもとに渡らないだけならまだしも、予算額だけが三割減となって、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)が使われずに、結果的に下請けいじめという形で (39)(39ノ2)(39ノ3)、現場を苦しめていることは、開発者にとっては二重、三重の苦しみです」と、苦しい胸のうちを吐露している。
告発の後、事態の進展が見られないまま、永見代表は2010年8月、生き残りを賭けて、大阪府を相手に提訴する(68)。訴えの主旨は「大阪府が発注したアンカー工事等で、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)を積算のみに利用し、本来そこに含まれるべき技術開発費 (48)(64) が原告に渡っていない」として、損害賠償と新工法の標章使用差し止めを求めたものである。
その裁判の経緯を「大阪府がタダで使った新工法」(55ノ2B)および「国交省VS大阪府」 (73ノ20B)という内容で記事にしてきたが、結果は国と地方では事情が違うと、いわば門前払いの形で棄却されている(68ノ2Ⅼ) 。
もとより、永見代表としても、訴訟・戦い自体が目的ではない。その後の3・11の被害状況 (67)(67ノ2w) 、異常気象による台風、豪雨による土石流など、災害列島日本の状況はまさに緊急事態である。国土の安全のため、NETISに登録され、多くの実績のある推奨技術が(81)(105)、全国の危険な現場で使われることが第一。そして、防災関係の予算縮減のため(81)(105)、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)を役立ててもらいたいということである。
だが、厳しい現実の前に、永見代表の戦いも四面楚歌の状況のまま、万事休すである。苦悩する永見代表は、やがてストレスから来る急性心筋梗塞で倒れて、しばしの休養を余儀なくされる。
ICU(緊急治療室)での治療、その後のリハビリ生活を経て、再び現場に戻ることで心境の変化を得るとともに、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の将来、展望をどうすべきかが切実な問題とし て、永見代表の肩にのしかかってくる。万が一のことがあったときに、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)はどうなるのか?
私生活面では、永見代表夫妻はダウン症児の親でもある。息子の将来はどうなるのか?そんな中で、新たな展望が開けるのは、子どもが仕事に通っている障害者施設の存在からだ。子どもがようやく成人になり、わずかな工賃とはいえ、施設に働きにいっている。
仲間のいる施設で彼らと過ごす時間を楽しんでいる。永見代表もまた、働く我が子を通して、障害者の実態を知り、施設を運営する人たちとの接点も生まれる。
その施設の存在をありがたいと思う反面、障害者の就労実態を知るにつれて (96ノ3)、多くの問題点や矛盾した現実に直面する。そんな中で、彼はIT技術者としての彼らの能力、パソコンスキルに着目する。
毎年、無水掘工法協会 (2ノ14)、LLP支援事務所では (48)(64)、全国の国交省管轄の公共事業および災害・防災関係工事の発注情報を収集し、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)が対象となる具体的な現場の「比較・検討」(31)(31ノ2)(31ノ3)(31ノ4)(31ノ5) (51)のために、パソコンでの作業を行っている。公共事業に関する各自治体への情報開示請求にもパソコンが不可欠である。その作業を障害者にしてもらえば、永見代表も助かると同時に、障害者の新たな仕事となり(96)、極めて現実的な経済的自立への道となる(82) (87)。
両者の協働は共通の利益を生む。しかも一つの障害者施設だけでなく、全国でも同様の展開が図れることから、無水掘工法(5)(9)(31(63)(81)(95)(95ノ2B)の普及と同時に、障害者支援という形での、もう一つの大きな社会貢献になる(82) (87)。
まさに、一石二鳥・三鳥の可能性が見えてきたことで、彼はその実現に向けて、命がけの取り組みを始める。
試行錯誤の末、無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の知的所有権を技術開発者(永見代表ほか)から、新たな非営利セクター=NPO法人に寄付・譲渡することにより(73)、全国の障害者仲間の公益共有財産にする。その技術の活用によるロイヤリティ収入が「障害者支援につながる財源確保」と「就労継続支援A・B型事業所(作業所)の工賃向上」を実現することで(82)、生活保護に頼ることなく、将来的には納税者にもなりうるとの展望が開けたことから、2013年7月にスタートしたのが、NPO法人「NETIS新技術活用協働機構」(73)である。
理事長には自らが身障者である波那本豊氏(NPO法人・自立生活センターFREE)、事務局長には永見代表が就任。ITを利用した新しい社会におけるNPOの働き、市民の社会参加など、いわゆる「ガバメント2・0(Web2・0)」、「新しい公共」、「共助社会づくり」との考えの下、行政と協働(コラボレーション)する新しい就労モデルを導入することで、新技術の活用を提案する(101)。
実際の無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)の施行に当たっては、オーナーシステムとともに、大阪の・ソルテック(塩田彰社長)が技術指導面を支える(57)(71)(72ノ2)(74)(103)(103ノ3B)(103ノ4L) (00(00)(00)。
はじめての試みとあって、必ずしも一朝一夕にとはいかないが「全国の障害者支援事務所で土砂災害防止・地域防災コラボレーター仲間でコスト削減を推進しましょう!」との呼びかけも始まっている。
すでに2013年(平成25年)秋施行の三重県の紀勢国道事務所での採用実績もあり、3360万円の縮減を果たすなど、「協働(コラボレーション)作業」の成果も出ている(71)(72)(72ノ2)(74) 。今後、さらに全国の身障者施設で、同様の展開が図れることから、まさに無水掘工法(5)(9)(31)(63)(81)(95) (95ノ2B)の普及と同時に、身障者の経済的自立を可能にする就労モデルとしても画期的である。
田中角栄元首相の落とし子ベンチャーとしてスタートし、皮肉にも田中派の金城湯池といわれた国交省(旧・建設省)に泣かされてきたが、ようやく新しい仲間を得ることによって、今後の展開が大いに注目されている無水掘工法なのである(4)(5)(9)(31)(63)(81)(95)(95ノ2B)。20240808Ⓓ